
<ハバーマンに会わなければ….>
ある御客様よりとんでもないカスタムの御依頼を頂いた。昨年の秋だったと思う。青いハネックのチョッパー。たまたま国内のHD雑誌に掲載されていた写真を御覧になったのである。それは誰が造ったバイクであるか私には一目瞭然であった。荘厳なヨーロッパの感覚に溢れ、さらに得体の知れない妖気に包まれたまるで中世の巡礼者の如きそのバイク。しばし沈黙の後、遂に彼はこう言ってしまった。『これを造って欲しい…..。』
<<トーマス・ハバーマン>> ヨーロッパのHDシーンと関わりを持った頃より彼の名はよく耳にしていた。物凄い男である。ヨーロッパで製作されたトップクラスのカスタムの殆どに関わってきた男。今日のヨーロッパでのHDカスタムの盛り上がりと成熟は彼の存在無しでは決してなし得なかった事だろう。しかも長い間裏方に徹してきた彼であるが昨年遂に独立し"HABERMANN PERFORMANCE"と言うSHOPを立ち上げたと聞く。いよいよシーンの表舞台へと登場して来たと言う訳である。しかしその時点において彼は私にとって早過ぎる男であった。さらに深くヨーロッパの文化/歴史/伝統/技術を理解しなければ彼の行っている事の全てを正確に捕える事なんて出来やしない。彼と対面する為には私はまだ越えるべき幾つかのステップが残っているはずだと思っていた。半年近くも躊躇していただろうか。彼の造ったバイクを日々見る度に畏怖の念は増大するばかりであったが、時間の経過と共に良い意味での開き直りが出来たのだろう。梅雨入り間近の頃だったと思う。『彼に会わなくては……』突然そんな思いに駆られた。私はドイツに向かう事を決めた。
HABERMANN PERFORMANCEの在るドイツ南部は御覧の通りユーロカスタムシーンを先導するビッグネームが集中する地域、まさにユーロカスタムの最前線と言っても過言では無い場所である。(一般の旅行会社がこの地域を紹介すると『ロマンティック街道とか古城街道があるドイツ観光のハイライト的地域』となる)そんな訳で今回もW&Wの全面協力を頂きスタッフのミナコとノビー夫妻の案内で彼等の新車ミニクーパーSに乗り計3日間/2,000kmに及ぶツアー敢行とあいなった。夜の10:00過ぎ迄明るい白夜のドイツ、夏にこの国を訪れたのは初めてである。車窓から眺める異国の風景の美しさに息を飲む場面も多々あった。実際にこの場所に来なければ理解出来ない多くの物事、そして濃密な時間をいつも私に提供してくれるミナコとノビー、そしてW&W Cyclesにこの場を借りてもう一度お礼を申し上げたい。Vielen Dank!!
2004.6/24
W&Wのある街ウ"ェルツブルグより南へ約300km程下った場所にULM(ウルム)と言う街が在ります。今回の旅のメインテーマであるHabermann Performanceの在る街です。アウトバーンを180kmの巡行で来ましたのでここ迄は2時間足らずで到着しました。ミナコは4~5ヶ月程前にも一度ここを訪れていたのでULMの市街地を抜け田舎道を辿らなくてはならないここ迄の道程も一度も迷う事なく到着する事が出来ました。
通りの途中で出くわした案内板。見慣れたBAR & SHEILD/HDディーラーの物と、そしてヨーロッパカスタムシーンにおいて非常に重要な存在であるのHPUの看板です。
★ HPU ….. パーツメーカー/フレーム、ステンレスホィール、CNCビレットパーツ等製作する老舗のメーカー。高性能なCNCマシーンを所有しておりヨーロッパ中のSHOPからの依頼でワンオフパーツを製作したりもしています。BAD LANDでもHPUには幾度もオーダーしており、この案内板を見た時は感慨もひとしおでした。(写真:上段左)
昨年BAD LANDで製作しましたこのバイクもHPU製のフレームアッシーを使用しています。(写真:下段)
通りに面した同じ敷地内にHDディーラー、HPU、そしてハバーマンのファクトリーが在りました。奥に見える茶色の建物がHPUです。
工場の入り口を何気なく覗いたらいきなりこんな光景が目に入って来ました。ハバーマンのファクトリー。HPUの真横に在ります。
フレームに挑むこの男こそ、 Mr.Thomas Habermann 本人です。
思わず唸ってしまいたくなる妖気漂うこのリアビュー….。
フロントダウンチューブ下部に造作したオイルタンク!!
現地ドイツでは尊敬の念を込めてHeavy Metal Masterと呼ばれるThomas Habermann。板金の技術にかけては世界でもトップレベルのHigh-End-Customerである事は間違い有りません。
鳥肌が立ちました。彼の製作途中のバイクを見てしばし呆然。予想を遥かに越えるレベル、これは本当に凄すぎる。鉄の塊があたかも画用紙や粘土細工で造られているかの如く自由な形を成しているではありませんか。細部の設計、溶接技術、表面の板金処理等、ここに在る物全てこれはもう奇跡の産物としか言う様が有りません。そして何よりもこの卓越した表現力とデザインのセンス。これはヨーロッパと言うよりもドイツでしか生まれ得なかった物でしょう。ゲルマン民族の遺伝子の中で脈々と受け継げられたある特定の分野における表現の集大成、それがハバーマンなのだと、そう解釈しました。
フレーム材料のパイプ。(上左)
ハバーマン自作によるフレーム製作用スペシャル治具。(上中)
初対面でしかも日本人。いくら客だからと言っても通常こうした御乱行は絶対に許されません。つまみだされても至極当然ですが、ハバーマンは違いました。トイレ以外であれば何処をどう撮っても構わないと言うのです。全くコピー不可の領域、本物が持つ絶対の自信と真の強さと言うものを実感しました。
詳細/不明な点等ハバーマンに質問している所です。色々な事を実に丁寧に教えてくれ、逆にエンジンの仕様/排気量、希望するリアタイヤの太さやサイズ、リアブレーキシステム、はたまたオーナーの身長、体重迄多くの事を質問されました。美しさにこだわりその人に合った世界でたった1台の走りに徹したバイクを造る。 彼は鋼鉄の美学と哲学を持ち合わせていました。
★赤いツナギの男がHabermann/中央のスキンヘッドの彼はW&Wスタッフのノビー、Minakoのダンナさんです。
ヨーロッパのカスタムシーンに詳しい方ならば今迄御覧頂いた写真に写っているフレーム/スィングアーム等を見て、『?』と思われた方もきっと多い事かと思います。各SHOP側もオープンにしている事ですし、ましてや彼のWEB SITEにジャンプすれば一目瞭然となってしまいますので勿体ぶらずにお教えしましょう。古くからHPUやHardcore、Bike Farm、Thunder Bike、Kodelin等々列挙すればいとまが無い程ヨーロッパで製作された各SHOPの有名なカスタムバイクのフレーム/タンク/フェンダーを製作していたのは実ハバーマンその人だったのです。BAD LANDで製作した例のバイクのフレームも直接のオーダーはHPUにしましたが製作したのはハバーマンです。日本人的な発想で行きますとこうした裏話的な状況には多少ネガティブな感情を持たれる方もいらっしゃるかも知れませんが、ここはドイツ、マイスターは人々の尊敬の対象ですし腕の良い職人に仕事を依頼するのは日本以上に至極当然、彼等の合理性に全く合致している事なのです。
2003年の冬に完成したHarbermannの最新作"Ghul"。<古城に棲まわう伝説の竜>の如きこの佇まい……。オートバイを擬人化して表現するのは大キライなのですが現車から発っせられるこの鬼気とした妖気と存在感に圧倒され、思わずそんな言葉を発してしまいたくなりました。この重厚さ…….、何度も申し上げる様にヨーロッパと言うよりもゲルマン人の血無くして辿り着く事の出来ない世界なのでしょう。製作方法/製作過程/そして盛り込められたアイディア等、あらゆる意味において世界No.1のHigh-End-Chopperと申し上げて何ら問題はないでしょう。
Habermann、そして彼女のDannyと一緒に記念撮影。今回の旅の目的はとにかくこのバイクを見に来る事にありました。そうです、ある御客様より頂いたとんでもないオーダーとはこのフレームを使用したバイクの製作依頼だったのです。
複雑なラインのスィングアーム。パテ処理では有りません、全てスチール・板金処理です。
見事なブラシ、そしてペイント作業はドイツでも非常に有名なデザイン集団"PFEIL DESIGN"の手によります。
タンクが目の前にあって前方が全く見ず……。身長168cmの私ではこのバイクを操る事は出来ません。
Habermannが見せてくれたもう1台のHigh-End-Chopper。つい10日程前、お客さんに納車したばかりのバイクだそうです。フレームのサイズ等は上記の"Ghul"と同じですが各部の造り込み等の違いから彼は『ローコスト・バージョン』と言っておりました。(上左)
ローコストバージョンと言ってもこの出来栄です。細部の造り込みがGhul程ではないしろ、むしろ現実的なカスタムだと思います。細かい事を気にせずガンガン走れます、こいつなら。
こちらは2年程前に製作されたバイクで、これもトップクオリティーの非常に美しい仕上がりでした。ボディーサイズはGhulよりも一回り程小ぶりで、跨がらせてもらいましたが私にピッタリのポジションでした。真剣に『欲しい』と思いました。(中右)
ここ迄の仕事をする人です。ましてや非常に脚光を浴びている時期でも有りますので、会う前はかなり"天狗になっているのでは"との懸念も有りましたが実際の彼は全然違いました。確かに自信に溢れ勢いに満ちた印象を強く感じましたが、実際は物腰の柔らかい物静かな男でした。オーダーにあたっての最終的な詰めは帰国後早々に行いまいして、先日遂にフレームキットの製作依頼を正式に彼に致しました。製作に要する時間は彼がかかりきりで仕事をして約2.5ヶ月必要との事。彼が約束してくれた完成予定は2005年1月となっています。Habermenn Performanceと書かれたでっかい箱を店の前でトラックから下ろす日が今から大変楽しみです!! しかしフレームが到着する前にこちらでもこなさなくてはならない仕事が山積みとなりますのでしばらくは激務の日々が続く事でしょう……..。フレームが到着次第、逐一このWEB SITEで御紹介致します!! 乞う御期待!!!